>>641
こんなにも寒い日だから家で凍えてるよりはむしろと思って僕も外に出てみたんだよ。
散歩するだけでもしんしんと降る雪と時折流れる風が覆い隠した町はいつもと違って新鮮だ。吐息が白くなり、緩やかに降る雪粒はまるで銀粉のようだった。
とても静かで、美しい光景、白と影で彩られた世界はさながら薄墨で書かれた長谷川等伯の水墨画といった感じさ。

その光景を見ているとああこの自然と一体化したいな、と言う感情が沸々と沸いてきてね。いても立ってもいられなくなって、人目につかない静かな場所で自分のを解放してやったのさ。
外気はとても冷たいというのにそれは少し触れただけで火で熱した鉄棒の様。それをビロードのように柔らかい雪で包み込んでこすり合わせて暖めるように優しく癒してもらったら誰だって長くは持たないだろう。
ふと我に返ると降り積もった新雪に自分の命が降り注いでいたよ。
真っ白でまだ誰にも触れられていない汚れない積もった雪…それを汚してしまった罪悪感を感じつつ、練乳のかかった目の細かいかき氷をポリ袋に入れて誰にも見られていない僕と雪だけの秘密にして家に帰ったよ。
あの秘密はまだ僕の冷凍庫に結晶となって凍っている。

ただ誰も知らない秘密を共有した僕の息子はかじかんでしもやけになりそうだ(´・_・`)