なるほど。

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22856?page=2

「福島第一原発」で活躍した
米国製軍用ロボットの存在
 インタビューの最後に、徳田氏は日本のロボット開発を事例に挙げ、科学技術の凋落ぶりを指摘した。まさにその凋落ぶりを示す事例を私たちは危機のさなかに目の当たりにしていた。
10年前の2011年4月、東日本大震災で被災し、原子炉がメルトダウン(炉心溶融)する世界最悪の事故を引き起こした東京電力福島第一原子力発電所でのことである。

 水素爆発で構内には瓦礫が散乱し、致死レベルをはるかに上回る放射能に行く手を阻まれ、人間が近づくことのできない原子炉建屋内に最初に投入されたのは、人工知能(AI)を搭載した米国製の多目的軍用ロボット「パックボット」だった。
ミニチュア重機のようなロボットにはカメラが搭載され、オペレーターは撮影された映像を見ながら遠隔操作する。
ロボットはアームを伸ばして建屋の扉を開けて内部に入り、瓦礫を避けたり、踏み越えたりしながら、放射線量や酸素濃度、温度、湿度などを測定し続けた。このロボットがなければ、事故後の復旧作業は大幅な遅れが生じていたことだけは確実だろう。

 このニュースを見たときの衝撃は、今でも鮮明だ。それまでテレビには頻繁に、愛嬌のある2足歩行ロボットやペットロボットが登場していた。
にもかかわらず、この国の窮地を救ったのは米国製の軍用ロボットで、日本のロボットは、イザという時に役に立たなかったからだ。
と同時に、「またか」との思いに至ったのも事実だ。
なぜなら、事故直後から高い放射線量を示す原発の上空を飛び続け、建屋の表面温度などを断続的に測定したのも、米空軍が保有する無人偵察機「グローバル・ホーク」だったからだ。

「パックボット」は、イラクやアフガニスタンなどの紛争地で、地雷や不発弾などを処理する目的で開発されたロボットだが、東日本大震災に限らず、米同時多発テロ(01年)では、崩壊した高層ビルの中から生存者を見つけ出す作業にも投入されている。
戦場にも似た大規模な災害の現場で有効な技術の多くは、軍事技術でもあるという証左だろう。