ミシシッピ大学の教授で、製薬業界のマーケティングなどを専門とする
Mickey Smith が、1950-80 年代の米国におけるトランキライザーの歴史について論じている
(Smith1985,1991)。
トランキライザーを扱ったマスメディアの記事の変遷、医療従事者向けの広告の分析などを通じて、
当時の米国におけるトランキライザーの位置づけとその変遷を多方面から描きだしている。
また、米国の精神科医Peter Kramer が著書のなかで、米国での 1950-60 年代の
トランキライザーの使用について言及している。
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ママの小さなお手伝いさんとは錠剤である。ミルタウン、アンフェタミン、バルビタール、
リブリウム、ヴァリウムは、50 年代と 60 年代初頭にもっとも人気が高く、
広く手に入った薬剤で、女性をつけあがらせないために、
また不快であるべき状況でも女性が快適でいられるために、
さらにはどうでもいい仕事に集中させるために使われた。(Kramer 1993 = 1997:64)
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米国では、トランキライザーは精神疾患の治療に使用されていたことに加え、
家庭にいる主婦が家事労働に専念できるよう日常の不安を軽減することなどにも使用されていたという。