>>140
https://www.naka2656-b.site/archives/29793551.html
この国・自治体などの行政庁による行政指導の限界については、行政法(国賠法)上の有名な判例があります。

つまり、事業者などが国・自治体などの行政庁に対して、「もはや行政指導に従うことはできないと真摯かつ明確に
表明」したときは、原則としてそれ以後の行政指導は国家賠償法上、違法となるというものです(最高裁昭和60年
7月16日判決、櫻井敬子・橋本博之『行政法 第6版』139頁)。

今回、酒類卸販売事業者の方々が12日に西村大臣らに飲食店との取引停止の要請を撤回するよう申し入れを
行ったのですから、もしその後も西村大臣ら政府が、酒類販売事業者などに対して、国などに従わない飲食店と
取引停止をするよう要請する行政指導を行った場合、それは国家賠償法上、違法となり、西村大臣ら国側は
酒類販売事業者などに対して損害賠償責任を負うことになります(国賠法1条1項)。

なお、行政手続法は、行政指導は「いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない」こと(32条)、
行政指導はあくまでも相手方の「任意の協力」により実現ものであること(32条)、許認可に係わる行政指導は
行政庁が「許認可の権限があることを殊更に示して協力を強制してはならない」等と明記しています(34条)。

この点、今回の国税庁からの酒類販売事業者に対する通達による行政指導は、国税庁にはコロナ対策に関する
職掌事務の権限はないことから、国税庁の権限を逸脱しており行政手続法上違法ですし、また、国税庁には
酒類販売に関する許認可の権限があるところ、その許認可権限をことさらに示して酒類販売事業者に対して
協力を強制していることも違法であるといえます。

このように、西村大臣ら政府の酒類販売事業者や金融機関に対する要請は行政手続法からみても
二重三重に違法であり、また昭和60年の判例に照らすと、今後も西村大臣らが同様の要請・行政指導を
酒類販売事業者などに対して行うと、それは国家賠償法上違法となります。