熱狂的鰻好きだった歌人の斎藤茂吉は戦前、「これからは鰻など食えない時代が来るかもしれぬ」と予想して大量の鰻の缶詰を買い込み、戦時中ちびちび食い伸ばしていた。家族には一切分けず、訪れた弟子などには偶に相伴させることもあった。
戦後も食糧難の時代は続き、ちびちび食べていた茂吉だが、昭和25年ころには錆びてしまったらしい。まあこの頃ならもう茂吉ほどの地位の人間なら普通の蒲焼きが食える世の中になっていたのだろうが

鰻缶詰を歌える2首

十餘年たちし鰻の罐詰ををしみをしみてここに残れる

戦中の鰻のかんづめ残れるがさびて居りけり見つつ悲しき