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「アジア系米国人」を隠れ蓑に

台湾生まれで小さいときに両親とともに米国へ移住し、起業家として成功したヤン氏は、
この寄稿文で「中国系アメリカ人」という表現を一切使っていない。

最初から最後までアジア系米国人(Asian American)という名称に
中国系も日系も韓国系もひっくるめて論じている。

ヤン氏は、中国系米国人(台湾系米国人2世)だから「習近平国家主席の中国」に住む
中国人ではない。従って「チャイニーズウイルス」とは関係はない。

ところがここからややこしいのだが、白人や黒人、ラティーノにとっては
「中国の中国人」も「米国の中国人」も中国人は中国人なのだ。

米国というのは多民族国家、世界中からやって来た移民、
そしてアフリカからの奴隷の子孫から構成される「雑居国家」だ。

出身国で何か起こればその国から来た人種や民族は直ちにネガティブなインパクトを
受けることがままある。

第2次大戦前中の日系人がそうだった。日米戦争のお陰でスパイ扱いされて10万人の日系人
(およびに日本国籍の移民)が砂漠のど真ん中に即席で建てれた強制収容所に入れられた。

欧州戦線で戦った日系2世第442連隊戦闘団の死傷率は31.4%(のべ死傷者9486人)を
出している。これほど死傷率の高い部隊は米史上ではまれだ。

彼らの武勲が戦後の日系人に対する社会復帰に大きく役立ったといえる。
敵国だった出身国・日本と米国の日系人とは違うという区切りをつけるのに貢献したのだ。

それでも戦後の今も日系人と日本とを完全に切り離して考える米社会ではない。

かつて筆者がインタビューしたことのある故ボブ・マツイ下院議員
(民主、カリフォルニア州選出)はこう言っていた。

「日本が肺炎にかかると、日系人は1週間後には風邪をひく。
今なお出身国で起きたことはそこの国から来た移民の子孫に響くんだ」