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◆あらゆる常識に反する作戦

 ロシア軍の兵士や将校は何のために自分たちが戦うのか、疑問を持っている。そんな兵士にどんなモチベーションがあるだろう。人間は何のために戦うのか、つまり何のために死ぬのかがわからなければ、士気が上がるわけがない。この戦争はあらゆる常識に反する作戦だ。
ロシア軍の死者は1万から1万2千人だと思う。人員の損失については、兵員を補充して何とかするだろうが、兵器の損害は短期では補えない。戦車が400台も破壊されたら、補充は不可能だ。兵器の破損によって、イニシアチブはウクライナ側に移りつつある。航空機の損害も影響している。航空戦力の援護がなければ、歩兵、戦車部隊の攻撃能力も防御力も大きく落ちる。航空戦力は短期では回復不可能だ。飛行士の訓練だけでも1年はかかる。
 この3週間でロシア軍は100機以上を失っているだろう。航空戦力の喪失というのは、パイロットと飛行機が撃墜される、というようなものだけではない。ヘルソンではウクライナ軍によってロシア軍の7機のヘリコプターが攻撃されたが、損害はもっと大きい。爆発の小さな破片が機体に当たるだけでもヘリコプターは修理が必要になる。実際ロシア軍も修理するためにヘリコプターをロシア国内に運搬した。実際の損害はもっと大きいはずだ。
そういう意味ではウクライナ軍のスティンガー地対空ミサイルは、高度6千メートルまでの空域を部分的に閉鎖することに成功していると言える。ロシアの航空戦闘能力をかなり抑圧している。スティンガーはワンセット1500万から5000万円くらいするが、ウクライナ軍には1000基ほど提供されているようだ。

◆電子部品も底をつく

あと2週間もすると、ロシアはミサイルさえ打てなくなるかもしれない。ロシア軍は台湾製のGPS受信装置を使っているが、ロシアでは生産できないので、もう補充の手段がない。電子部品はほとんどが台湾製と中国製だ。ストックを使い果たしたら終わりだ。
欧米にとって経済制裁以上に効果があるのが、エネルギー関連の完全禁輸措置だろう。いまの経済制裁下では、ロシアはまだ戦えるが、本当に戦争を止めようと思ったら、エネルギー関連の完全禁輸しかない。しなければロシアは巨大な国だから、貧しくなっても10年はもつだろう。