>>953
◆ロシアにはまだウクライナに投入できる兵力はあるか?
 ロシアの陸軍の兵力は40万人だが、実際に投入できるのは28万だ。あとは欠員だ。ここから空挺部隊、ミサイル部隊、これに第201基地、第102基地などロシア南部に駐留する軍を除くと、残るのは兵力28万の半分くらいだ。しかもその大部分は徴集兵だ。
 ロシアは2019年に国家親衛隊を作るという戦略的な過ちを犯した。親衛隊の兵力は、常備軍から引き抜いたものだ。当初、2017年の法案には20万人とあったものが、2018年になると40万になった。しかも親衛隊は全員志願兵だ。親衛隊は歩兵ではなく、戦闘を目的としていない、白馬の騎士のようなものだ。戦場に出ようものなら格好の餌食だ。しかも勤務条件は一般兵士よりずっと良い。(※国家親衛隊は大統領直属で、国防軍とは別の指揮系統に属し、国境警備や対テロ対策、組織犯罪対策、治安維持などを主任務とする)
 われわれがマリウポリで遭遇したシベリアのウスリー軍などは動員された予備役兵の軍隊だった。

◆欧米の軍事支援はうまくいっているか?
 うまくいっている。ドイツでさえ、レオパルト戦車の提供を決めた。これは冷戦時代の1970年代の戦車だが、ロシアのひと世代あとの戦車T‐90より優れている。技術面でもロシア製より良い。兵員の訓練も早く対応できる。砲撃訓練は2週間もあれば十分だ。航空兵は訓練に半年かかるが戦車や装甲車、砲撃の訓練は一番簡単だ。
 もし、現在の戦闘でウクライナ軍が勝てば、そこで戦いを止めるのではなく、反攻に出て、ウクライナ東部を取り戻し、クリミアに反転攻勢をかけることも可能だ。しかしそれには、参謀本部が損耗と利害を計算しなければならない。
 いまクリミアのロシア軍部隊はウクライナ東部に転戦させられているため、事実上、無防備になっている。しかし、ロシア軍がクリミアに兵力を結集した場合、ウクライナの損傷率は大きくなるので、それでもクリミアを取り返すのかどうか、という判断が必要になるだろう。
 いずれにしても、ロシアが負けた場合は、ロシアの政治状況に反映するだろう。プーチンとその取り巻きが権力を保てるとは到底考えられない。
 米国政府は、ロシアの政権が変わることを目指しているようだ。新たな政権は西側との協議の場につくだろう。