上がらない賃金「日本だけが異常」 求められる政策の検証<参院選・くらしの現在地(1)>

◆米国、英国、韓国では賃金上昇

「日本だけが異常だ」。
東大の吉川洋名誉教授は2013年1月、日本経済がデフレに陥った原因を「賃金の下落」と主張する著書を出版し注目された。
吉川氏は今月、取材に対し
「当時も今も、先進国で日本だけ賃金が上がらない異常な状況は変わっていない」と強調した。

経済協力開発機構(OECD)によると、名目賃金は1995~2020年にかけて米国や英国で2倍超、韓国は3倍近く上がり、物価の上昇率を超えた。
一方、日本は賃金が下落し物価の上昇率に届かない。 

中略

◆「値上げ許容できないのは当然」

政権を奪還した安倍氏は、日銀総裁に黒田東彦はるひこ氏を任命し主張通り緩和を始めた。
だが、9年以上をかけても経済の好循環は実現していない。
黒田総裁は今月「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言して批判を受けた。
国民が値上げに耐えられない背景には吉川氏らが言う「上がらない賃金」の問題がある。

大和証券の末広徹氏は、上昇を続ける社会保険料や住宅価格など、
総務省の消費者物価指数の公表値(生鮮食品を除く総合)に含まれない要素も加えた「実感に近い」物価指数を作った。
12年平均と比較した22年4月の物価は公表値の6.6%の上昇を超える15.4%の上昇。
この実感に近い物価に基づいて算出した実質賃金は、同期間で11%も減っていた。

末広氏は「実質的な賃金がこれだけ目減りしては、家計が値上げを許容できないのは当然」と解説する。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/183402