我々は「戦闘」について議論するわけではないということだ。
我々が扱うのは「戦争」なのだ。
たしかに「戦闘」を使った著書は非常に多く、ほぼ研究され尽くしていると言ってよい。
しかし、その「戦闘」が属している「戦争」というものを形作っているパターンや
計画やコンセプトなどの研究は驚くほどその数が少ないのだ。

戦闘というものは戦争における技術的側面であり、これは工場や車の販売が
経済システム全体の活動の中で果たす役割と同じようなものだ。
私が避難しているのは戦略のシステムと研究が全く無視されているという事実なのだ。
社会科学として研究されなければならないのは「戦闘」ではなく「戦争」であり、
「戦術」や「テクニック」ではなくて「戦略」なのだ。

(「戦略論の原点」J.C.ワイリー著、奥山真司訳)