アゾフ連隊に志願した22歳夫が戦争捕虜に――夫を捜す25歳妻アンナが語ること
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e3d012bc1c57609fca8aa0b1b01ba3a5e5d2461?page=1
アンナは生後4カ月の長男、スビャトスラフを抱えながら、製鉄所の地下シェルターに身をひそめた。そして、ロシア軍による連日連夜の砲撃に耐え、4月末に脱出する。
 夫のキリルは避難直後、マリウポリで活動するウクライナ内務省軍の部隊、アゾフ連隊に入隊する。志望の動機についてキリルはアンナにこう語った。
 「仲間が国のために死んでいるのに、避難所でただ座っていることはできない」
 アンナは当初、「それなら離婚する」と言って強く反対したものの、最終的に夫の判断を尊重した。
 ロシア側のメディアが報じた投降兵の映像のなかに、松葉杖をついて歩くキリルの姿があった。

 9月7日、ベネチア国際映画祭8日目。キリルの妻、アンナが登壇したのは、ウクライナ危機を記録映像で綴った
ドキュメンタリー映画「FREEDOM ON FIRE(フリーダム・オン・ファイヤー): UKRAINE’S FIGHT FOR FREEDOM」の記者会見場だった。

 「私が生きていること、今日ここにいることは本当に奇跡です。この奇跡は、ウクライナの兵士たちのおかげです」

 志願兵となった夫キリルが負傷したのは、4月の3週目だった。暗い地下室で麻酔もなしに手術を受けるキリルの映像は、
うめき声とともに観る者の胃をしめつける。
 エンドロールに拍手が重なる。監督のエフゲニーは涙をこらえきれず、出演者のウクライナ人記者、そしてアンナと抱き合う。

 初出演した映画を見終わって、アンナが感想を語った。
 「この映画を見るのは初めてだったのですが、最後はアゾフスターリにいる自分に戻ったようで涙が出ました。
上映後、多くの人が話しかけてきて、私を応援してくれました。どんな言葉だったか覚えていないくらい」
 「私は映画の中で、いまだ捕虜になっているウクライナ人について訴えました。夫のことだけでなくすべての軍人、
市民、医師についてもです。日本でアゾフ連隊は長い間、テロ組織であるかのように懸念されていたとも聞きましたが、
今はそうではなくなったようです。だから、この映画をいろいろな国で広めて、全世界にとっての危機について伝えていきたいです」