「投機筋の円買い圧力が強い。きょうの介入は1兆円を超えそうです」
2004年1月9日朝、財務省大臣室。国際局の幹部は、財務相の谷垣禎一に淡々と説明した。
円相場は1ドル=105円台目前まで来ている。谷垣に迷いはなかった。ゴーサインを受けた
日銀のディーリングルームから、切れ目なく1分毎に10億円単位の円売り注文が出された。
「財務省はいくらドルを買ったら気が済むんだ。介入資金が底をつくぞ」
大手銀行担当者の読み通り、財務省は介入枠を使い切ったが、保有する米国債を日銀に売却して
5兆円の介入資金を調達し、午後2時ごろには1度に5000億円規模の円売り注文を出した。
この日の介入額は、ドル買いでは史上最大の1兆6664億円に達した。

財務省幹部は「円安誘導ではなく、投機筋の動きを粉砕するためだった」と証言する。
勝負の発端は、円相場が1ドル=117円前後で落ち着いていた昨年8月。投機筋はイラク情勢の悪化などを材料に
「日本政府がいくら介入しても、1ドル=100円を超す円高になる」と世界の投資家から巨額資金を集めていたのだ。
投機筋の思うつぼになれば、回復しかけた景気が腰折れしかねない。
財務省は大みそかも含めて年末、年始に15営業日連続で介入を続けて円高を食い止め、2月のG7での相場反転を狙った。
しかし、別の資金力のある投機筋が円高への誘導を狙って円買いを仕掛け続けた。政府・日銀は相場の基調が円安に
反転した2月下旬以降も、1ドル=110円付近になるまで連日押し下げ介入を続け、徹底的に投機筋を排除した。
ほとんどの投機筋は、3月上旬に利益が得られないまま取引を手じまいせざるを得なくなった。
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毎分10億円かよ…