2011年以降、プーチンの頭の中には地政学も外交戦略もない。それは彼が生き残る役に立たないからだ。
彼が生き残るためには、ロシア国民が声に出さない大欲求に応えてやる必要があった。それが、対外戦争であった。

ウクライナ侵略は、大半のロシア人民が心の底から望んでいるから、発生し、持続しているのである。
NATOは敵であり、NATOとの戦争は不可避である――と考えているのは、プーチンではなくロシア大衆なのである。
だったら、プーチンとの交渉などでウクライナ侵略が終わるわけがない。

ロシア人民は一億こぞって、NATOとの全面核戦争へのエスカレーションを、心の底から祈願している。
プーチンは生き残るためには、このリクエストに応え続けるしかないのだ。

アメリカ本土住民の目からは、ウクライナ戦争は他人事のように映るだろう。ところがロシア人民の意識の上では、
「対米戦争」の第1ラウンドはとっくにスタートしているのである。そこに米国が停戦を要求するということは、
とりもなおさず、ラウンドスコアでロシアが1点勝ったというメッセージにしか、ならないのだ。戦争は、終らない。

「ウクライナ戦争はプーチンの戦争」だという誤解を捨てよ!
ウクライナ戦争は「ロシア人民の願望」である。プーチンは「人民の意向」の操り人形となっているにすぎぬ。