自らエネルギー危機を招いたEUの「あまりにも素朴すぎた」対ロ経済制裁
SELF-INFLICTED WOUNDS
2022年12月27日(火)11時59分 ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/post-100462.php

<EUの経済成長を支えてきた、ロシア産の安い原油や天然ガス。
経済と貿易は安全保障と別物と信じていたEUは、
エネルギー問題、高インフレ、そして極右勢力台頭にも見舞われる>

こんなことは自明の理と思われるのだが、制裁(西側諸国が好んで使う外交のツールだ)
というものは相手国にしかるべき経済的打撃を与える一方、
それを科す国にとっての負担が重すぎてはいけない。
だがロシアのウクライナ侵攻に対するEUの経済制裁は、後者の条件を満たしていない。

ロシア産の安い原油や天然ガスは長年にわたりEUの経済成長を支えてきた。
だが今のEUは、何としてもそれへの依存を減らしたい。
ロシアを罰するにはそれが一番だと考え、
代わりにアメリカなどから輸入する液化天然ガス(LNG)への依存を増やしている。

しかしLNGは気体の天然ガスに比べて高価で、
しかも加工や輸送の過程で多くの二酸化炭素を排出する。
ウクライナ侵攻前でさえ、価格はロシア産天然ガスの4~5倍だった。
今はもっと高い。侵攻前の価格の2倍以上だ。