少子高齢化の今、外国からの移民を否定し続ける限り、日本の未来はあまり変わらない


日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている BBC東京特派員が振り返る
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64357046

房総半島の村で会議場に座っていたことがある。
消滅の危険があるとされる約900の日本の集落のひとつだったからだ。

議場に集まった高齢の男性たちは、現状を心配していた。
1970年代以降、若者が仕事を求めて次々と村を離れ、都会へ行くのを、ここのお年寄りたちは見ていた。
残る住民60人のうち、10代はたった1人。子供はいなかった。

「自分たちがいなくなったら、だれが墓の世話をするんだ」。
高齢男性の1人はこう嘆いた。日本では、死者の霊を慰めるのは大事な仕事なのだ。

しかし、イングランド南東部で生まれた自分にとって、この村が死に絶えるなど、まったくあり得ないばかげたことに思えた。
絵葉書にしたいようなたんぼや、豊かな森林におおわれた丘に囲まれた、美しい場所だ。
しかも東京は車で2時間弱という近さなのに。

「ここはこんなに美しいのだから」と、私はお年寄りたちに言った。
「ここに住みたいという人は大勢いるはずです。たとえば、私が家族を連れてここに住んだら、どう思いますか」。

会議場はしんと静まり返った。
お年寄りたちは黙ったまま、ばつが悪そうに、お互いに目をやった。
やがて1人が咳ばらいをしてから、不安そうな表情で口を開いた。

「それには、私たちの暮らし方を学んでもらわないと。簡単なことじゃない」

この村は消滅へと向かっていた。
それでも、「よそもの」に侵入されるかと思うと、
なぜかその方がこの人たちには受け入れがたいのだった。