この10年、いや20年ぐらいだろうか。世の中のネガティブなワードがどんどん漂白されている。合併はM&A、アイドルグループからの脱退は卒業、売買春はパパ活、解雇はリストラ、雑誌の廃刊は休刊、粉飾決算は不適切会計、賭博場は統合型リゾート、議員への調査は点検、という具合だ。言葉の正確さを期しているというより、きっと何か不都合なものから目をつむりたいのだろう。

国産ロケットには、わが国の科学技術の威信をかけている面がある。ゆえに、日本国民としては「失敗」という言葉を忌避したくなるのは分かる。だが、まったく同じ現象がたとえばアメリカや中国あたりで起きていたら、われわれはどう反応するだろうか。

「ああ、今回は『失敗』したのだな」

と捉えるのが普通だ。何事も、普通が一番であろう。

(おわり)