>>335
(抜粋)
そんな女性達に追い討ちをかけたのは雑誌『クロワッサン』の編集方針の転換である。
同誌はやがて想定読者層を、有職の独身の女性から有職のヤングミセスにシフトしていった。

特集として、仕事と結婚生活を両立させ、出産そして夫の協力を得て子育てをおしゃれに
仕事と同時進行させる女性たちを取り上げるようになった。
そこには自分たちが想定したような生活臭のする、おさんどんと子育てに振り回される
ダサい主婦といったイメージは片鱗も嗅ぎ取ることは出来なかった。

読者たちにとって雑誌『クロワッサン』はシングルという新しいライフスタイルのモデルを生涯に渡って提示し、
将来ライフステージの各段階で、同世代の専業主婦から羨望させるおしゃれな生き方を提示し続けてくれるはずだった。
かつて20 - 30歳代のとき、母親達が口うるさく勧めるお見合い話を拒絶することが出来たのも、
同じ生き方をしている同世代の女性たちが存在し、彼女らもまた『クロワッサン』の信奉者であり同志であるという確信であった。
しかしながらその確信が全て崩れたとき女性たちは言いようのない失望、虚脱感、孤独感、そしてぶつける対象を見出せない
怒りを感じることになった。
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世が世なら、クロワッサン編集部は元読者たちに襲撃されて血の海になっていても不思議ではない。