「潜水艦 その回顧と展望」、「造艦技術の全貌」「昭和造船史」によると、
元々燃料の使用により重油が減少したタンクに海水を補填することは複殻式潜水艦の外殻重油タンクでは普通に行われているそうで、
潜航中は外殻重油タンクの底部は常に海水と交通させておき使用した重油量だけ海水をタンク内に導き入れるようになっています。

 外殻は耐圧構造ではないのでこれにより重油が減少した外殻タンクが水圧に耐えることができます。
このタンク底部にある海水溜まりに常に弱い陰圧をかけることで重油の漏洩を防ぐようにしたのが有名な「重油漏洩防止装置」でした。
重油漏洩防止装置の略図が「昭和造船史」にあるのですが、要約すると重油タンクより上部に海水重力タンクがあり、
重油の減少に伴い既存の海水押し出し管を通して外殻重油タンクの底部に海水を導き入れるようになっています。
その海水押し出し管の途中に陰圧をかける漏洩防止ポンプを接続しているのが重油漏洩防止ポンプです。
 海水押し出し管というのは「日本海軍潜水艦史」によれば、燃料を使用するときに海水をタンクに送る管とのこと。
 これが「駆逐艦 その技術的回顧」の海水補填重油タンクの略図とよく似ています。
 双方のキモは、海水は重力タンクから管で重油タンクの底部に導かれること、重油はタンクの上部からボイラー又は別の燃料タンクに送られること、のようです。
 普通の重油タンクの汲みだし配管がタンク下部(但し沈殿物対策で多少底より上)に設置されるのとは対照的です。

 重油タンクに海水を導入することで一定量の重油が混合物、エマルジョンなどの発生で使用不能になると思いますが、
それらは数十トンから数百トンの重油内でそう大きな割合ではなく、また比重が重油より重く沈下していくので上部からの重油配管には混入し難いということのようですね。