プーチンロシアは、いまのところ形式的にはナチスドイツのような独裁制には到達していない。

自由とか権利の平等を守ろうとする法治主義は、プーチンが、リベラルの価値観は時代遅れと公言して
古典的自由主義やロールズの意味でのリベラリズムをゴミ箱に放り投げ、さらにこのところは
西欧の価値観とは違う固有の価値観をめざすと主張していることにより、実質的にますます形骸化しつつ
あるだろうが、

そのロシア「固有の価値観」の守護者としてのプーチンが、たとえロシア正教会から"首席エクソシスト"
の立派な肩書を得たとしても、それによって憲法を超えたという話は聞かない。いまのところは既存の
憲法や法令の細かい解釈をまくしたてて、その趣旨を逸脱し、大統領の権限を実質的に強めているように見える。
それが表れたのが去年秋の「部分的動員」ではないか。あれは一つや二つの軍管区の動員ではなく、事実上総動員だ。