??空軍
ロシア空軍機は依然として、長距離からの対地攻撃能力の制約を受けている。
なお、長期攻撃用に通常爆弾に誘導キットを付けたものを投入している。
この誘導爆弾の精度は高くないものの、この種の爆弾の弾頭サイズが深刻な脅威を与えている。
なお、ロシア空軍に現状、ウクライナ軍防空網突破能力はないものの、同軍は「戦力保全」されており、
進撃するウクライナ部隊にとっての主たる脅威の一つである。

??指揮統制インフラ
2022年7月にウクライナ軍GMLRSによって指揮統制インフラが攻撃されたのち、
ロシア軍は主要司令部・指揮所をGMLRS射程外に後退させ、司令部・指揮所の防御を固めた。
主要司令部とその前方の旅団規模司令部との連絡は有線(ウクライナ民間用通信網+野戦電話)で
行っており、電波発信を減少させている。しかし、大隊規模以下では、アナログ軍用無線(平文)に
おおむね依存しており、戦術レベルにおいて、十分な訓練を受けた通信兵が不足している状況を反映している。

??結論
以上で概観したように、ロシア軍は主要兵科及び兵器システムの改善・進歩ができている。
また、欠点を特定する集約的な取り組みも確認できる。
一方で、これらの適応努力の多くは状況対応的であって、ロシア軍の深刻な能力不足を
埋め合わせることを意図したものだ。それゆえ、喫緊の課題への対応力は時とともに向上しているものの、
これから生じる新たな脅威の予測には苦慮している。

結論としては、ロシア軍は防御面においてウクライナ軍に大きな困難をもたらすが、
ウクライナ軍がロシア軍防衛態勢を混乱させ、ロシア軍を流動的な状況に置くことができれば、
ロシア軍は迅速にその協同能力を喪失してしまう可能性が高いということになる。
ウクライナを支援する各国は、ただ主要兵器システムを供与するだけでなく、
重点的な訓練やウクライナ軍が持続していけるための装備提供の保証
といった方向へと支援をシフトしている。

今後、ロシア軍を効果的に混乱させ、最終的にロシア軍を敗北へと追い込むのに
極めて重要になるのは、戦術である。