オールタンクドクトリン
当時のイスラエルでは「戦車には随伴歩兵は必要」と判断されており、戦車に歩兵を随伴できる車両が求められていました。しかし、戦車に随伴できる戦車並みの装甲を持った歩兵輸送車両は予算上から開発装備が不可能な状況でした。実際装備していたのはM3ハーフトラックしかなく輸入できても軽装甲のAPCであり、戦闘直前に歩兵を下車させざるを得ず、戦車の機動性を損ねるものでした。無理して歩兵を随伴させれば歩兵の損害が大なるものは予想されたために、イスラエルが苦肉の策として編み出したのが航空機(機動砲兵の代わり)と戦車を陣地突破として使用し、突破後の弱体化した敵陣地を歩兵に占領させるという戦術です。

当時の対戦車手段は戦車と対戦車砲であり、発見困難な対戦車砲がもっとも危険な目標でした。ただ、対戦車砲は小回りが利かないので戦車の機動で回避しつつ急接近して蹂躙(踏みつぶす)という戦法だったのです。