>>815
事実上世界で初めて1969年に缶コーヒーの商業的大量生産と販売に成功したUCCも、清貧かには大変な苦労を重ねたらしい。
なお缶コーヒー自体はそれより10年以上前に各社から販売されているものの、品質や流通の問題をクリアできず短命に終わっている。 以下抜粋

(前略)
上島氏がめざした缶コーヒーは「ミルク入り」だった。 その頃、喫茶店でもブラックコーヒーはほとんど嗜まれず、ミルクを入れるのがスタンダードな飲み方だった。
というのも、高度経済成長の当時、乳飲料は高級品でありながら健康をイメージさせる飲料だったからだ。

冒頭に「世界で初めて缶コーヒーを開発」と記したが、それに対して何を大げさな、容器をびんから缶に変えるだけのことだろうと思うかもしれない。
しかし、それはちと早計だ。 缶コーヒーを開発するため、幾重もの技術の壁を越えていたのだ。

例えば、ミルク成分の分離の問題。開発当初、コーヒーの抽出液とミルクを混合させて缶に封入しても、ミルクの成分が分離して缶の上部に浮いてしまった。
どんなにうまく混合させたつもりでも、やはりミルク成分が分離してしまう。
試行錯誤を繰り返した末、ようやくミルクの粒子を均質化することで分離を抑えるという手法にたどり着けた。

また、加熱殺菌による味の変化の問題にも悩まされた。
缶入りコーヒーは長期保存のために高温殺菌しなければならないが、高温で処理すると加熱臭が付いてコーヒーの風味を損なってしまう。
そのため数えきれないほどの試作品を飲み続け、加熱臭を残さないための原料(コーヒー、ミルク、砂糖)の成分比率を探し出した。

さらに、コーヒーと缶の化学反応の問題にも苦慮した。 
コーヒーに含まれるタンニンが、缶やめっき用はんだの鉄イオンと結合してしまい、折角のミルク入りコーヒーの色がブラックコーヒーみたいに真っ黒になってしまう。
その化学反応を抑えるために四苦八苦し、実験の失敗で膨大な数の缶を捨てながらも、ようやく缶の内壁に特殊コーティングを施すことに解決策を見出した。(後略)