米国、対ロ長距離ミサイル使用「認めず」 ウクライナに:日本経済新聞
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米政府はウクライナが求める武器使用制限の撤廃を巡り、長距離ミサイルを使ったロシア領内への攻撃を容認しない方針を変えていない。ロシアとの対立がエスカレートするのを避けるため、国境付近からロシアの軍事拠点に限って攻撃を認める現在の条件緩和に慎重だ。

米国防総省のライダー報道官は27日の記者会見で「ウクライナ側は国境を越えた攻撃から身を守るために米国の安全保障支援を利用できる」と述べた。一方「ロシアへの長距離攻撃、奥深くへの攻撃に関する我々の方針は変わっていない」と釘を刺した。

米欧は5月にウクライナが西側諸国から供与された武器を使い、ロシア領内の軍事施設を攻撃することを一部容認した。ウクライナの自衛のみに使うよう要求してきた方針を転換したとはいえ、ロシアの首都モスクワなどへの攻撃は承認していないとの立場をとる。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米欧から供与された兵器によるロシア領内での使用制限を全面撤廃すべきだと主張。ロシア軍がドローン(無人機)やミサイルでウクライナに大規模攻撃したのを受け、同氏は条件緩和の必要性を唱える。

ウクライナは8月上旬にロシアのクルスク州で越境攻撃を開始した。現在も攻勢を続けている。ライダー氏は「ウクライナのクルスク進攻の狙いや作戦について事前通告を受けていなかった。ゼレンスキー氏が緩衝地帯を作るためだと言っているのを聞いた」と述べるにとどめた。

米国はウクライナに譲渡した射程300キロメートルの長距離ミサイル「ATACMS」をロシア領に撃つことも禁じている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは27日、ロシアが軍用機の90%をATACMSの射程外の基地に移動させていると報じた。

米政府高官の話として「ロシア領をATACMSで攻撃しても現在のところ影響はほとんどない」とも伝えた。ウクライナ側が切望する使用許可に転じる予定はないという。