11月21日にロシア軍がウクライナのドニプロ市を大型ミサイルで攻撃し、ロシア政府はこれを新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」だったと公表しました。ウクライナ情報機関の分析では「1発のミサイルから6発の弾頭が分離し、それぞれの弾頭から更に6個のクラスター子弾が分離された」としています。

オレシュニクは滑空弾頭ではなく通常弾道の複数弾頭
 ここで注目したいのは、ロシア軍の新型中距離弾道ミサイルは極超音速滑空体(HGV)ではなくMIRV(複数個別誘導再突入体)またはMRV(複数再突入体)だったという点です。つまり大気と宇宙の狭間の高度を滑空跳躍しながら弾道ミサイルよりも低く飛行するHGVではなく、通常の弾道飛行を行うミサイルでした。迎撃し難い高度を複雑に飛んで迎撃を掻い潜るのではなく、単純に数を増やして迎撃を飽和させて突破しようとする狙いの兵器です。
 このコンセプトの多弾頭式の弾道ミサイルは確かに終末段階(ターミナル・フェイズ)で迎撃することは困難です。オレシュニクは1発のミサイルで6×6=36個の子弾が降って来るので、パトリオット防空システムでは一部は落とせますが他は対処しきれず突破して来る可能性が高いでしょう。
 これに対抗するためには複数弾頭が分離前に撃墜するか、迎撃側も多弾頭化する必要があります。しかしそれには大気圏外(宇宙空間)での迎撃能力がどちらにも必須となります。また宇宙空間で弾道ミサイルが放出するバルーン・デコイ(風船囮)ごと纏めて撃破する散弾システムも提案されています。

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