敵よりロシア軍を「火の海」にする北朝鮮のトンデモ兵器
高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト 12/4(水) 6:05

ウクライナ侵略の片棒をかついでいる北朝鮮はロシアに対し、自国で最大級の自走砲システムを供給していると見られている。

シベリア中部の都市クラスノヤルスクで撮影され、SNSで拡散された写真には、平台型貨車に載せられた北朝鮮製170mm自走砲
「M1989」2両が収められている。
ちなみに、一部報道で同自走砲の名称が「コクサン(谷山)」と伝えられているのは誤りで、正しくは「チュチェ(主体)」という。
コクサンとは、これより旧式の「M1978」の名前だ。

北朝鮮は、170mm自走砲と240mm多連装ロケットを、合わせて70門以上、ロシアに送ったもようだ。

M1978もM1989も、有事に軍事境界線の北側から、韓国の首都・ソウルを直接攻撃する目的で開発された。
射程は自走砲としては長大な54キロに達する。イラン・イラク戦争では双方がM1979を導入し、敵側の油田に対する攻撃に使ったという。
が、命中率が悪すぎて油田には1発も砲弾が落ちなかったと言われる。

1990年代、北朝鮮は「ソウルを火の海」にすると公言して威嚇したが、そのための主力兵器がこれらの自走砲だった。

しかし、韓国軍は早くから、これらの兵器がとうてい使い物にならないと見抜いていたようだ。

これら自走砲の弱点は、命中率以外にも山ほどある。
まず、砲撃準備を整えるまでの時間と、砲撃を終えて移動を始めるまでの時間が30分とやたらと長い。
また、発射間隔も5分に1発とこれまた長い。 巨大な砲と重い砲弾を、人力で扱わなくてはならないからだ。

その割に、威力は弱い。砲弾を遠くへ飛ばすために炸薬の量を絞っているからで、ずっと口径の小さい米軍の105mm砲弾と同等レベルだという。
(続く)