民主主義が本当に必要なのかどうかを問う作品

お坊さんと鉄砲

オススメ

13 名前:名無シネマ@上映中 :2024/12/18(水) 10:21:35.09 ID:3rR8PLPv
選挙が導入され王政から民主主義(立憲君主制)へと自国が遅れた"グローバル化"への一歩を踏み出すと知って、未来を憂い、ある特別な目的のために銃を用意させたこのチベット仏教の高僧..現代の世界の有りように対する鋭い洞察力が凄過ぎる。
皮肉もたっぷりと染み込んだオチには胸が熱くなるし、コミカルさもあって久しぶりに泣き笑いしてしまった。
模擬選挙、僧侶、アメリカ人の銃コレクター...というキー・エレメントの想像もつかないリンクだけでなく、細部に様々な伏線も巧みに張られている。終盤クライマックスでのベンジ、ロン、タシ
3人のやり取りなど軽妙でウルトラC級に素晴らしい。脚本を書いたパオ・チョニン・ドルジ監督につくづく感服。俳優が本職ではないという3役者による、この場面の演技も自然だった。前作「ブータン山の教室」同様、これも個人的お気に入り作品に。
選挙実施と民主主義化は2008年に実際にブータンで起こった大きな転換だけれど、物語はそこから派生して欧米先進国が長い苦難の歴史の末に勝ち取って手に入れてきたものの功罪、その両方について改めて考えさせる。既に十分に満ち足りた生活なのに、そこへ更に余計なモノを外から押し付けてくる、売り付けてくるのが資本主義が舵を取る大量消費社会。格差と分断、対立と抗争も呼び寄せる。民主主義化はそれらへの第一歩とも思われやしないだろうか。秀作