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そしてそのイギリスから独立を果たしたアメリカはイギリスよりも更に頭を抱えていた。
当然だろう、独立戦争において戦場になったのは今アメリカという国の領土となっている自らの土地だ。
戦火により国内は荒れ果て、商業の中心地として発展していたニューヨークは今や「野人や野獣が住んでいたかのように」荒廃しきっている。
これまで貿易を行っていた主な相手であるイギリスとは当たり前だがまともな貿易ができる状態ではないし、
戦争中の紙幣の乱発に次ぐ乱発により政府発行の紙幣は額面価値の1/40という文字通り尻を拭く紙にもならない紙屑となり果て、
独立のために戦った兵士達には給料を支払えない状態が七年も続き、軍の国に対する忠誠などはとっくに消え失せてかろうじてワシントンのカリスマで繋ぎ止めている状態だ。
アメリカという国の中央政府的意思決定機関である連合会議は各州からの拠出金によってのみ運営されていて常備軍の保持権限すら持っていない貧弱なものであり、
国民達もアメリカ人へと国籍を変えた民衆、すなわち愛国派が比較的富裕な者で構成されるイギリス寄りの国民(忠誠派)や在米イギリス人に攻撃を加え、
彼らは自らの安全のためにアメリカからカナダへと逃げ始めている。
この状態を放置していれば時を待たずしてアメリカという国は貧困と憎しみで内側から崩壊してしまう事は火を見るよりも明らかだろう。

18世紀の末頃は日本だけではなく何処の国も財政問題に対して頭を悩ませている時代だった。
だから独立を果たし産声を上げたばかりのアメリカという国もこの財政問題というどこの国にもあるごくありふれた、
ごくありふれているからこそ深刻な問題に対して頭を悩ませていた。