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小泉悠氏が「ロシアは軍事的合理性というよりは民間人の殺害を目的としたドローン攻撃を行うようになってきている」と指摘した背景には、ロシアの戦術が戦争の進行に伴って質的に変化してきたという事実がある。

戦争初期の2022年から2023年初頭にかけて、ロシアは主にウクライナの発電所や鉄道、通信施設などのインフラを標的とした攻撃を行っていた。これらは兵站や指揮系統を麻痺させる目的があり

軍事的合理性を装った

戦術と見なされていた。
小泉氏もこの段階では、民間人の被害が結果として生じているものの、攻撃の主目的はインフラ破壊にあると分析していた。

しかし、2023年後半から2024年にかけて、ロシアはイラン製シャヘドドローンを大量投入し、都市部の住宅地や病院、学校などを直接攻撃する事例が増加した。国連人権高等弁務官事務所やヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際機関は、これらの攻撃が民間人を意図的に標的としたものであり、戦争犯罪の可能性があると指摘している。

2025年現在では、ロシア軍がヘルソンやハリコフなどの都市で、歩行者や公共バス、救急車といった明らかに非戦闘員を狙ったドローン攻撃を繰り返しており、軍事的合理性の枠を超えた殺傷行為が常態化している。こうした状況を踏まえ、小泉氏は「民間人殺傷を目的とした攻撃が増えている」と明言したのであり、これは戦術の変化に対する冷静な分析である。

したがって、小泉氏の発言は「ロシアが民間人に配慮していた」と主張しているわけではなく、戦争の初期段階と比較して、民間人を直接狙う攻撃が増加しているという事実を指摘したものである。感情的なレッテル貼りではなく、戦術の質的変化を時系列で捉えた分析として理解すべきである。