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ロシア軍の「恐怖遺伝子が壊れている」とする見方は、実際の兵士の行動や戦術文化と大きく乖離している。ロシア軍には歴史的に「督戦隊」と呼ばれる部隊文化が存在し、恐怖を克服するのではなく、恐怖を強制的に抑え込む仕組みが制度化されてきた。

督戦隊とは、自軍兵士が命令に背いて撤退・逃亡・投降しようとした場合に、背後から銃撃・拘束・処刑を行う部隊である。第二次世界大戦のスターリングラード攻防戦では、ソ連軍が「死守命令」に従わせるために督戦隊を編成し、逃亡兵を射殺する命令を実行した。

2022年以降のウクライナ戦争でも、ロシア軍は督戦隊に相当する部隊を運用しているとされる。ウクライナ軍に捕虜となったロシア兵の証言では、「退却しようとすれば後方の督戦隊に撃たれる」と命令されていたとされる。ドローン映像でも、逃げようとした兵士が後方部隊に制圧・射殺される様子が確認されている。

つまり、ロシア兵の「度胸」や「恐怖遺伝子の欠如」は、個人の資質ではなく、逃げれば味方に撃たれるという強制的な構造によって生まれている。これは戦術的合理性よりも、兵士の命を代償にした前線維持の手法であり、軍事倫理や人権の観点からは深刻な問題とされている。