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ロシアの弱体化は、単に欧米の戦略的利益にとどまらず、アジアの安定と自立にとっても不可欠な条件である。日本がウクライナ戦争に関心を持つのは、道義的な立場だけでなく、地政学的現実に基づく合理的判断である。

ロシアは歴史的に、東アジアに対しても軍事的・政治的圧力を加えてきた。北方領土問題に象徴されるように、日本はロシアとの間に未解決の領土紛争を抱えており、ロシアの軍事的優位が続く限り、外交的選択肢は制限され続ける。また、ロシアが中国・北朝鮮と連携を強めることで、権威主義的なブロックが東アジアに形成されるリスクも現実的である。

さらに、ロシアの弱体化は、資源価格の安定化や軍事的緊張の緩和を通じて、アジアの新興国にとっても恩恵をもたらす。ロシアが戦争経済から脱却できず、財政破綻に近づいている現状は、国際秩序の再編において日本が発言力を持つ好機でもある。

加えて、ロシア(ソ連時代含む)の勢力圏において、黄色人種が受けてきた歴史的な抑圧は看過できない。1937年には、極東に住む朝鮮人約17万人が「対日協力の疑い」を理由に中央アジアへ強制移住させられ、文化的アイデンティティを奪われた。第二次世界大戦後には、日本人約60万人がシベリアに抑留され、極寒の地で強制労働に従事させられた。さらに、クリミア・タタール人などのチュルク系民族も、民族浄化に近い集団追放を経験している。

これらの事例は、ロシアが黄色人種に対して体系的な差別と抑圧を行ってきた歴史的事実を示しており、ロシアの弱体化は、アジア民族の尊厳と自決を回復するための一歩でもある。

「外野が面子を語るな」という批判は、日本が自国の安全保障と地域の安定に関心を持つ当然の権利を否定するものであり、非現実的である。むしろ、ロシアの弱体化がアジアの民主主義国にとって戦略的利益であることを、冷静に、国際的な文脈で語ることこそが、日本の責任ある立場である。