イスラエルへの兵器供与凍結をめぐり、ドイツが興味深いことになっているのでまとめてみる。

支持率が石破政権以下のメルツは、イスラエルへの兵器供与凍結を決めたわけだが、これはイスラエルのリベラル系のロビー関係者にとっても衝撃で、「まさかいきなりそこを決断するとは思わなかった」と。

そもそもメルツは、こんな極めて重要な決断をインナーサークルだけで決断したようで、国防相のピストリウスすら知らなかったと。

Spiegelによると、ピストリウスはイスラエルが反発して、イスラエルからドイツへの兵器供与に影響が出るのではないかと消極的だった模様。実際ネタニヤフは、ドイツへの兵器供与を凍結するかもしれないみたいな脅しはしているが、それはイスラエルの兵器産業、疲弊する経済に影響が出るので、する可能性は低い。なので、ピストリウスの懸念は杞憂に終わる可能性が高い。アロー3を売れなくなっちゃう。

一方、メルツの決断は国民の大多数の意見を反映したもので、ZDFの世論調査では、回答者の77%がイスラエルへの兵器供与凍結に賛成。

連立相手のSPDは大賛成しているし、他の野党もメルツの今回の判断を支持している。

じゃあ、ドイツメディアが「メルツが反発を受ける」と騒ぐ「反発」は誰から来ているのかというと自身が率いるCDU内の親イスラエル派(の特に強硬派)。CDUは全体的に元々、親イスラエルだったので、今回の決断の本質というよりかは、政治的な立ち位置の問題として、「親イスラエルであることが保守だ」という意識が強いっぽい。

ただ、外相ヴァーデフールなどCDU内のリベラル(メルケル系)は今回のような判断を支持している。

メルツは以前、SPDのイスラエル政策について、「『国是』という言葉は、もはや言葉だけでなく、行動によって再び評価されることになる」と批判して、兵器供与を再開すると言っていたので、状況が大きく変わったとはいえ、手のひらを完全に返した方となったように見える。

だが、元々ドイツの「国是」というのは、コソボ紛争の時にホロコーストのようなことは2度と起こさないという時に初めて出された考えなので、ある意味、メルツはドイツの本来の「国是」に原点回帰したとも言える。

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