>>56

「事後の秩序回復が追認」って言うけど、国際法上は武力行使の合法性と事後処理は別問題。NATOのユーゴ空爆は安保理の明示的授権なしに行われたため、合法性は議論されたが、安保理決議1244は空爆を「追認」したのではなく、停戦後の国際管理を定めたもの。秩序回復措置があったからといって、空爆自体が合法化されたわけではない。慣習法の形成には国家実行+法的確信(opinio juris)が必要で、ユーゴ空爆がそれを満たしたかは今も学術的に議論中。

「文脈ではなく論理的帰結の問題」と言うが、条約解釈はウィーン条約第31条に基づき、文脈・目的・通常の意味に照らして行うのが国際法の原則。都合のいい論理だけで条文を拡大解釈するのは、法的には通用しない。

ウクライナがロシアの侵攻を「ジェノサイド」としてICJに提訴したのは事実だが、それはロシアの行為に対する法的評価であって、ウクライナ自身の軍事行動をジェノサイドと認めたわけではない。提訴の論理を逆適用して「ウクライナもジェノサイドを認めた」とするのは、論理のすり替え。

しかもICJは2023年に

「ロシアのジェノサイド主張には根拠がない」

と暫定判断を下している。

国連総会決議の棄権が増えたのは、戦争長期化による政治的疲弊や中立国の増加によるもので、ロシアの行動が合法化されたわけではない。2022年の決議では141カ国がロシアの侵略を非難しており、国際的な評価は明確。安保理で非難決議が採択されないのは、ロシアが常任理事国として拒否権を持っているからであって、合法性の証明にはならない。

結局、「黙認=追認」というのも論理の飛躍。国際法では、黙認と合法性は別物。国連が武力行使を明示的に認めていない以上、ロシアの侵攻は国連憲章第2条4項に違反する武力行使と評価され続けている。