日本のウクライナ支援は、感情的な「善意」ではなく、現実的な国益判断に基づく行動である。日本が守ろうとしているのは、自由で、経済的に豊かで、安全な生活を続けるための国際秩序だ。もしロシアの侵略が成功し、力による現状変更が「通用する」と世界が学習すれば、次に同じ手を使うのは中国か北朝鮮である。東アジアの安全保障環境が崩れ、日本の経済と生活が直接脅かされる。その連鎖を防ぐため、日本は欧米とともに「侵略は割に合わない」という原則を守っている。

経済的にも、この支援は合理的な選択だ。今の世界は、中国・ロシア圏と、米欧・日本を中心とした自由主義経済圏に二分されつつある。どちらの陣営と商売を続ける方が、長期的に豊かさを維持できるかは明白だ。自由主義陣営は世界GDPの半分以上を占め、技術・金融・資本の中心を担う。法の支配と契約の信頼がある世界でこそ、日本企業は安定して投資・取引ができる。対して、ロシア・中国は資源依存が強く、政治的リスクが高い。政権の恣意や制裁で市場が突然閉ざされる可能性があり、長期的なビジネスの信頼基盤がない。日本が支援を通じて秩序側に立つのは、「どこで生き残るか」を決める経済戦略でもある。

ウクライナ支援はまた、自由主義陣営内での信頼の証でもある。日本が西側の一員として原則を守り続けることは、日米同盟やクアッドなど安全保障協力を強化し、中国や北朝鮮への抑止力を高める。逆にここで「中立」を装えば、同盟国からの信頼を失い、アジアで孤立する。援助の継続は、将来の日本防衛を支える外交的信用を維持する手段でもある。

結局のところ、日本のウクライナ支援は「遠い国の戦争への介入」ではなく、「自国の未来を守る現実的な投資」だ。自由貿易・法の支配・民主主義という秩序を維持することこそ、日本が経済的に豊かで安全に暮らし続けるための条件である。短期的なコストよりも、秩序崩壊による長期的損失の方がはるかに大きい。日本はそれを理解しているからこそ、ウクライナを支援し、自由圏に軸足を置き続けている。