>>868
この投稿群の議論は「ポクロフスクが陥落した場合、ウクライナ軍はどこまで後退するか」という仮定に基づいているが、前提がやや極端だ。結論から言えば「ポクロフスク陥落=パブログラード防衛」は過大評価であり、ウクライナの防衛体制はそれよりはるかに段階的である。

ポクロフスクは西ドンバスの補給拠点で、ここを失えばドブロピリヤやミルノグラードへの直接補給が難しくなるのは確かだ。しかし、ウクライナ軍はあらかじめクラマトルスク~コンスタンティノフカ~ドブロピリヤにかけて複数の防衛帯を構築しており、一箇所の喪失が全体崩壊には直結しない。ポクロフスクが落ちても、西ドンバス全体の防衛システムは維持される設計になっている。

よく言われる「パブログラード防衛線」は、ドニプロペトロウシク州に位置する鉄道と補給の要衝であり、確かに最終ラインの一つだが、そこまで後退するのは最後の段階だ。実際の次期防衛軸はドブロピリヤ~ニューヨーク~コンスタンティノフカにかけての複層地帯であり、すぐにパブログラードへ下がる想定は現実的ではない。

冬季攻勢についても、凍結によって機動はしやすくなるが、ロシア軍も燃料・整備・補給の制約を受ける。長距離攻勢を維持すれば補給線が伸び、結局は泥濘と燃料不足で再び停滞するのが過去2年のパターンだ。冬は「進める季節」であると同時に「兵站が崩れる季節」でもある。

さらに、ウクライナ参謀本部は2024年秋から西ドンバスに防衛工学旅団を展開し、ドニプロ川東岸までの広範囲に防御帯を構築中だ。地下壕、対戦車壕、橋梁破壊の準備、地雷原の設置が進み、仮にポクロフスクを失ってもパブログラードまで戦線が崩壊する構図にはなっていない。

要するに「ポクロフスク=最後の砦」というネット上の単純化は誤りだ。現実の戦線は層構造的で、段階的な持久戦を前提としている。ロシア軍が冬季攻勢を仕掛けても、補給・燃料・人員の限界で深く進める見込みは薄い。前線は形を変えながらも、当面は膠着と消耗の状態が続くだろう。