ロシア側に降伏、あるいはロシア圏の影響下に入ることのリスクは、アジアの歴史を見れば明白だ。韓国、北朝鮮、ベトナムという三つの事例は、ソ連・ロシア型の支配体制がもたらす「長期停滞」と「自由の喪失」をはっきり示している。

朝鮮半島では、戦後、北がソ連の庇護下に入り、南がアメリカの支援を受けた。結果は70年後に決定的な差となった。北朝鮮は秘密警察と軍事優先体制によって閉鎖国家となり、国民は飢餓と監視のもとで生きている。一方、韓国は自由主義と市場経済を基盤に発展し、民主化を果たして世界有数の経済大国となった。同じ民族でありながら、どの陣営に属したかが国の運命を分けた。

ベトナムもまた同じ構図を示す。1975年に北が勝利して統一を果たしたが、その後は計画経済と国家統制で経済が停滞し、国民生活は長く苦しかった。結局、ソ連崩壊後に市場経済を導入し、外資依存で発展を再開した。つまり、ロシア型の中央集権モデルは自立成長を妨げ、最終的には西側の資本と制度に依存せざるを得なくなる。

ロシアの勢力圏に入った国々の共通点は、国家による経済統制と、個人の自由・言論の制約、司法の独立の欠如だ。政治的忠誠が社会的地位や生活条件と直結し、批判や選択の自由は実質的に存在しない。ロシア連邦内でも、ブリヤートやダゲスタンなどの非スラヴ地域は経済的に周辺化され、人的資源が戦争動員に利用されている。

したがって、ウクライナがロシア側に屈すれば、その先にあるのは「平和」ではなく、こうした従属構造と停滞の固定化である。ロシアに降伏しても、北朝鮮やベトナム型の体制が待つだけだ。日本にとっても、ロシア的専制を容認する前例は自国の安全保障を脅かす。

結論として、ロシアへの降伏は「終戦」ではなく「長期支配の始まり」であり、自由主義圏にとどまることこそが、繁栄と安定への唯一の道である。