>>227
トランプが停戦を望んでいるのは確かだが、アメリカ政治や世論の構造を踏まえると、それが実現する可能性は極めて低い。アメリカではロシアに対する嫌悪と不信が超党派的に共有され、ロシアとの妥協は「侵略の容認」として強い反発を招く。民主党も共和党主流派も、この戦争を「民主主義と専制の戦い」と位置づけており、停戦を受け入れれば国家理念の自己否定になる。バイデン政権はもちろん、トランプが政権を取った場合でも、この世論を無視した妥協は政治的自殺行為に等しい。

トランプは「30日以内に戦争を終わらせる」と繰り返しているが、その提案は実質的にロシアの現占領線を容認するもので、ウクライナも議会も支持していない。アメリカの安全保障当局は「現状線停戦はロシアの既成事実化を認めることになる」として明確に反対しており、議会・軍・外交機関のどれも動く兆しはない。トランプの停戦発言は、政策ではなく選挙向けのアピールに近い。

加えて、アメリカの反ロシア世論は「倫理的圧力」の性格を持つ。ロシアへの妥協は裏切りと見なされ、政治家がそれを口にすれば即座に支持を失う。バイデン政権が戦争を「民主主義の防衛」と定義したことで、ウクライナ支援は外交政策ではなく価値観の象徴になった。よって、トランプが政権に復帰しても、議会と世論の抵抗を前に方針転換は不可能だ。

結論として、アメリカとロシアの恒久停戦は現実的に成立しない。トランプの発言は“戦争を終わらせたい”という政治的ポーズに過ぎず、アメリカ外交の本流は今後も「秩序維持とロシア抑止」を軸に続く。