アメリカを中心とする西側世界と、ロシア(旧ソ連)を中心とする権威主義圏を比較すれば、社会の豊かさ・自由・公正さの水準には決定的な差がある。これは理念や宣伝ではなく、実際にその支配下にあった国々の姿と、そこで生きた人々の選択が何よりの証拠だ。

冷戦期、東欧やバルト諸国の人々は、命を賭してでも西側への脱出を試みた。鉄のカーテンが崩壊した後も、旧ソ連構成国の多くが民主化と西側志向を選び、EUやNATOへの加盟を求めた。逆に、ロシアの影響下に残った国々は、経済停滞、腐敗、情報統制、貧困の再生産という構造から抜け出せずにいる。人々がどちらの社会に憧れ、どちらを拒むかが、体制の価値を最も端的に示している。

アメリカ社会にも問題はあるが、自由な選挙、報道の多様性、市民社会の監視機能があり、異なる意見が制度の中で共存できる。これに対してロシアは、選挙が形式化し、反体制派や独立メディアは排除され、社会の流動性が失われている。政治的自由を持たない社会は、経済的豊かさも維持できない。

結局、アメリカ世界は「自己修正できる秩序」であり、ロシア世界は「閉鎖と抑圧によってしか安定を保てない秩序」だ。ソ連崩壊後30年以上が過ぎても、ロシアの周辺国が一斉に西側を志向し続ける事実こそ、人々がどちらに未来を見ているかを雄弁に物語っている。