ここ48時間(10月29~30日朝)のウクライナ前線の状況を整理する。

主戦域は東部ドネツク州・ポクロフスク周辺。

米国のシンクタンク Institute for the Study of War(ISW)が10月29日・30日付でまとめた分析によると、ロシア軍はこの地域で小隊単位による浸透作戦を継続し、ミルノグラード南東郊外やポクロフスク西部のナヒモヴァ通り付近で新たな進出が映像分析で確認されている。

一方、ISWは「現時点ではウクライナ軍の防衛線が差し迫って崩壊するという兆候には至っていない」と明記しており、ロシア軍が市全体を確実に掌握したとは報じていない。ウクライナ側も防衛を維持しつつ、北部ロディンスケ東部では局地的反撃も実行しており、防衛線崩壊=総撤退という構図にはなっていない。

北東部のクピャンスク方面では、ウクライナ軍が限定的に前進を報告しており、ロシア軍も北ハルキウ州ヴォウチャンシク方面で攻勢を主張しているが、戦線を大きく変える突破や包囲には至っていないため、現状は「小規模攻防の継続」という状態。
後方やインフラ域では、ロシア軍による無人機・ミサイルによる電力網・都市部攻撃が活発化。10月30日にはウクライナ国内で大規模停電、死者・負傷者のみならず、冬を前にした生活・支援基盤への影響も懸念されている。

総じて言えるのは、ロシア軍が着実に浸透・前進を試みる中で、ウクライナ軍は持ちこたえており、全面的な崩壊・包囲という転換点にはまだ至っていない。戦況は「動きあり・決定的変化なし」の消耗戦フェーズにある。

日本としては、過剰な楽観も悲観も避けつつ、支援継続・情勢監視・長期的視野で防衛・外交姿勢を維持するのが現実的な対応だ。