イギリスは冷戦期以降、国内需要だけでは兵器産業を維持できないため、輸出で成立するモデルを作り上げてきた。
英政府は「外交と輸出を一体化」させており、首相や外相が商談を直接後押しするのが普通。
輸出によって同盟網を拡大し、英主導の安全保障関係を築くのが狙いでもある。
つまり英国にとって、兵器輸出は外交政策の延長線であり、抑止や同盟形成の手段。
したがって、GCAPも「いかに第三国へ輸出して産業を維持し、影響力を広げるか」が最初から計画の中核にある。

日本は、防衛装備移転三原則によって長年、実質的な輸出禁止政策を取ってきた。
その結果、製造企業は「自国調達のみを前提」にした構造(量産効果が出にくい)。政治的にも国内世論の警戒が強い。
そして最大の制約は、米国技術との関係。主要戦闘機はすべて米国系技術に依存しており、米国のITARを経ずに販売できる製品は限られる。
したがって、「GCAPを中東などへ輸出」という段になると、日本政府内では必ず“アメリカの意向を確認する”という政治的段取りが必要に。

英伊は「少しでも早く海外販売ルートを確保したい」
日本は「技術移転や安全保障上のリスクを最小化したい」
という方向に動く。

結果として、機体設計の段階から「輸出仕様」「国内仕様」で微妙な優先順位の違いが出てくる。
暗号通信・識別IFF・電子戦装置の輸出制限センサーやAI関連のソースコード共有範囲などで調整が難航するリスク。

英国のBAEや防衛省は、政治判断が早く、首相が直々に輸出を推進する伝統。
日本は逆に、省庁間調整と国会審議が必須。
つまり英国が「1か月で決めたい」案件を、日本は「1年かけて検討する」。
このタイムラグは多国間開発では問題で、交渉タイミングや契約条件の不整合を生む。

日本は「米国との摩擦を避けたい」、英国は「米国とも競合してよい」。この違いが輸出対象国をめぐり衝突しうる。
日本側の承認が得られず、「共同開発したのに輸出機会を逃す」という事態が起こりかねない。
英国側から見ると、「日本が慎重すぎて、せっかくの市場機会を逃す」と映る。
逆に日本側から見ると、「英国が商業主義に走って安全保障を軽視している」と映る。