ここ48時間(10月30~31日)のウクライナ前線は、引き続きドネツク州ポクロフスク周辺が最大の焦点となっている。米シンクタンクISW(戦争研究所)の最新分析では、ロシア軍が小規模な浸透部隊を多数投入し、市街地や南東のミルノグラード郊外で前進を続けていることが確認された。衛星・映像情報でも、ナヒモヴァ通り一帯で戦闘が継続している様子が見られる。ロシア軍はこの地域に最大17万人を展開しており、兵力面ではウクライナ軍より優勢とされる。一方で、ISWは「ウクライナ防衛線が差し迫って崩壊する兆候はない」と指摘しており、全域制圧には至っていない。戦闘の性質は市街地への浸透と兵站線(補給路)攻撃を組み合わせた典型的な消耗戦であり、ロシア側はFPVドローンや長距離砲撃で後方補給を断つ戦術を強化中だ。
北東部ハルキウ州クピャンスク方面では、ウクライナ軍が「限定的な前進」を報告しており、逆にロシア軍も北部ヴォウチャンシク周辺で攻勢を主張している。いずれも戦線を決定的に動かす成果ではなく、双方が局地的な攻撃と防衛を繰り返している段階だ。
後方では、ロシア軍によるミサイル・無人機攻撃が続き、電力施設や鉄道網に被害が出ている。国連はザポリージャでの空爆について人道法違反の可能性を指摘しており、後方攻撃が体系的に行われているとの分析が強まっている。
総じて見ると、ポクロフスク前線ではロシア軍がじりじりと圧力を強めているが、ウクライナ軍の防衛は崩壊しておらず、戦況は依然として「膠着した消耗戦」の範囲にとどまっている。決定的な戦線変化はなく、双方とも大きな損失を出しながらも持久戦の様相を強めている。