ここ48時間(11月6日夜~8日朝)のウクライナ前線の状況について、信頼度の高い公開情報(ISW、位置情報付き映像、双方発表)を元に整理する。最大の焦点は引き続きドネツク州ポクロフスク市街地である。ロシア軍は小規模な浸透を繰り返して市内の複数区画へ展開しているが、包囲または全域制圧には至っていない。

ロシア軍の前進は「大部隊で一気に押し切る」形ではなく、2~8人程度の小隊規模で建物・塹壕・工場区画へ分散して侵入する形が主となっている。これはウクライナ側の火力集中を避ける目的がある。市街地北部・北西部での位置情報付き映像により、ロシア軍が局地的に前進していることは確認されている。一方で、市街地南部および西側の補給路は依然としてウクライナ側が確保しており、「完全包囲」は成立していない。

ISWは11月7日付の分析でも、「ロシア軍の前進は戦術的に重要だが、ウクライナ軍防衛線の差し迫った崩壊を示すものではない」「ロシア軍は市街地全体を維持し続けるために必要な支配密度には達していない」と評価している。つまり、現状は「制圧」でも「防衛安定」でもなく、市街地を挟んだ押し引きが継続している段階と見るのが妥当である。

北東部クピャンスク方面でも、市街地東部や倉庫地帯で小規模浸透が確認されているが、主防衛線は維持されており、ロシア側の「包囲達成」主張は誇張と見られる。

また後方に関しては、ロシア軍がウクライナの電力施設・指揮所に対して空爆と自爆型ドローン攻撃を継続している一方、ウクライナ軍はロシア・クルスク州内で弾道ミサイル「イスカンデル」関連車両および対空レーダーを破壊したと発表し、精密打撃能力の維持が確認された。

総じて、ここ48時間の戦況は「ロシア軍が市街地でじりじり前進」「ウクライナ軍が包囲を回避しつつ防衛と再配置」「兵站線と後方への相互攻撃が継続」という構図である。どちらかが決定的に崩れた段階ではなく、消耗戦が続いている。過度な楽観・悲観ではなく、淡々と推移を観察するのが妥当だろう。