ここ48時間の前線状況について、公開情報(ISW、地理特定映像、各参謀本部発表)を元に、整理する。

最も激しい戦闘は、引き続きドネツク州ポクロフスク方面。ロシア軍は市街地北部・北東部・東部で限定的な前進が確認されている。位置情報付き映像では、住宅街や建物単位の確保が行われていることが確認された。一方、ウクライナ軍は市内および北方ロディンスケ方向の陣地を維持しており、参謀本部は「包囲は発生していない」と公式に否定している。ISWは最新分析で「ロシア軍の前進は戦術的には重要だが、防衛線の差し迫った崩壊の兆候はない」と評価している。現在の戦闘は、塹壕・建物を巡る押し引きの市街戦であり、いずれが優勢とも断じられない段階。

北東部クピャンスク方面では、ヴォウチャンシク方向でロシア軍が緩やかに前進。ただしクピャンスク中心部の攻防に大きな変化はなく、両軍とも塹壕後退と再配置が中心。戦線の劇的変動は確認されていない。

南部ザポリージャ方面では地上戦の明確な前進はなく、砲兵戦とドローン戦が主。砲撃密度は過去2週間の中で高い水準にある。

ここ48時間で特徴的なのは、前線よりも後方・兵站の攻撃。ロシア軍はキーウ、ドニプロ、オデーサなどの発電・送電インフラへの再攻撃を強化。これにより複数地域で停電や給水停止が発生。一方でウクライナ軍はロシア領クルスク・ベルゴロド方面の補給拠点に対して精密打撃を実施し、イスカンデル関連車両や戦術レーダーを破壊したと報告。双方とも「前線を直接崩すのではなく、補給と後方を削る」局面が進んでいる。

総括すると、この48時間は、ポクロフスク市街戦が継続する中で、前線は微前進に留まり、決定的な崩壊は発生していない。同時に、冬季を前にした電力網と兵站線を巡る相互攻撃が強まったことが重要。状況は依然として消耗戦であり、結果が急速に動く段階ではない。