独裁国家に経済を頼るリスクが浮き彫りになった

「中国が邦人をスパイに仕立てるのはサジ加減一つで簡単です」
 そう話すのは日中青年交流協会理事長も務め、長年交流事業に携わった鈴木英司氏だ。

「実際にスパイ摘発担当の国家安全省は11月19日に⾼市⾸相発言を非難しながら、『⽇本情報機関による中国への浸透・機密窃取のスパイ事件を数多く摘発してきた」と誇示する声明を出しています。中国が邦人をスパイに仕立てるのはサジ加減一つで簡単です。声明は“いつでもやりますよ”という意味です」(鈴木氏)

 中国では反スパイ法が施行された2014年以降、鈴木氏ら邦⼈17⼈が拘束されている。

 最近では今年7月にアステラス製薬の日本人社員がスパイ活動をしたとする罪で3年6か月の実刑判決が一審で出され、その後、社員側が控訴せず確定したことが伝えられた。

 そこまでの暴挙に至らなくとも、過去の例を見ると中国に進出する日本をはじめとした外国企業やその従業員に圧力をかける方法はいくらでもあると関係者は指摘する。

「中国に進出している流通や製造業の拠点に対する許認可権限を使った締めつけは考えられます。検査を名目に“確認”がとれるまで営業を認めない手法で、かつて在韓米軍への新型兵器配備を認めた韓国に怒った中国は、進出している韓国系企業に対して大々的にこの手を使い、狙われた企業は打撃を受けました」(北京駐在経験者)


 また、現地に進出する工場が原料を輸入する際の審査を厳格にし、通関を認める数を減らしたり時間をかけたりするのではないかとの懸念も出ている。

 これらはいずれも、「国際的な商慣行ルールを破った」と非難することは難しい“ステルス制裁”と言える。

「中国は予告なしに(締めつけを)しますからね。突然、想像できない形でやってきます。一気に措置が取られるわけではなく、時間を置いて次々繰り出してくるとか。されたら“響く”ようなことをするのはうまいんですよ。

許認可権を使った稼働停止要求も輸入の事実上の制限も、すべてやってくることが想定できます」(鈴木氏)

「上海では11月28日、日本人歌手がステージで歌っている最中に照明と音楽が落とされ、コンサートが突然中断されました。