ウクライナ戦争の「ドローン万能論」を対中国戦に当てはめる誤り
https://www.foreignaffairs.com/united-states/americas-drone-delusion
ウクライナ戦争の特殊性
広大で連続した地上戦線(600マイル以上)、両軍とも制空権を確保できていない、機甲部隊・精鋭部隊が早期に消耗。
結果として歩兵主体の消耗戦に移行
この環境では、安価、短距離、大量投入可能な小型ドローンが極めて有効だった。
ただし、ウクライナ軍が苦境に陥っている主因はロシアの大型滑空爆弾。小型ドローンは日常的損耗を生むが、決定打は重爆撃。

米中戦争(インド太平洋)との決定的な違い
米中衝突は本質的に:空と海が主戦場、数千kmに及ぶ距離、島嶼・台湾・尖閣など限定地点が焦点
ここでは勝敗を決めるのは:制空・制海能力、長距離打撃、高度な統合作戦(空軍・海軍・宇宙・情報)

小型ドローンが役に立たない理由
航続距離が短すぎる、高高度・高速の戦闘機を迎撃できない 、弾道・極超音速ミサイルを防げない 、空中給油機やAWACSを守れない。
結果として、米軍が必要とするのはPAC-3、THAAD、SM-3/6、AIM-260、AIM-174B、AMRAAMなど高価だが不可欠な兵器で、安価なドローンでは代替不可。

「高性能無人機」も安くはない
期待される次世代無人機(CCA):1機 2,000万〜3,000万ドル、消耗品として使えない、中国も同様の開発を進めている→ 相対優位を生まない。
結局、既存の巡航ミサイルやデコイと役割が重複。問題は「技術」ではなく「数の不足」。

中国の現実的な軍拡
中国は世界最大のドローン産業を持ちながら主軸は有人戦力
具体的には:J-20 第5世代戦闘機:約1000機規模へ、 最新ミサイルを大量生産、駆逐艦・巡洋艦を毎年多数建造、AWACS 約60機(米国は16機・老朽化)
→ 質と量の両方で優位に近づいている

米国の弱点
F-35調達数は限定的、F-47は高価・遅延、海軍のF/A-XXもさらに遅い、AWACS更新計画(E-7)も迷走。
その結果、決定的に重要な航空戦力の「量」が不足。

「安価なドローンで数を揃えれば何とかなる」という発想は幻想
本当に必要なのは:航空・海上戦力の量産、ミサイルの大量備蓄、潜水艦・爆撃機・戦闘機の確保。
「摩擦の少ない安価な解決策」に逃げたい米国の心理そのものが、戦略的錯覚を生んでいる。