2019年11月12日 08時00分00秒
脳をフル活用するとカロリーが大量に消費されるというのは本当か?

>スタンフォード大学で霊長類の神経内分泌学について研究しているロバート・サポルスキー氏によると、対局中のプロのチェスプレーヤーが1日に消費するカロリーは平均6000kcalにもなるとのこと。これは普通に生活している一般人の約3倍で、運動しているプロのアスリート選手に匹敵する量です。

>◆思考してもしなくても脳の消費カロリーはほぼ一定
「存在するだけで大量にカロリーを消費する脳がフル稼働したら、一体どうなるのか?」というLive Scienceの質問に対して、オタワ大学の神経科学教授であるクロード・メシエ氏は「実は消費カロリーはそれほど変わらない」と回答しています。メシエ氏によると、人が何か新しいことに取り組むと脳内にある新しいタスクを学習するための領域が、大量のカロリーを消費するようになります。しかし、これはあくまで脳がその部分に送る血流量を増やしてエネルギーの配分を変えたに過ぎず、「脳全体が使うエネルギーの総量は一定で、ほとんど変わらない」とのこと。

>メシエ氏は「私たち神経科学者は、脳の活動を『ボンネットの中』と呼んでいます。これは、脳の働きの大部分は私たちには自覚できない無意識下で行われているという意味です」と述べて、何か新しく学んだり物事について考えたりといった意識的な活動と、脳の消費カロリーは無関係だとの見方を示しました。

>なお、サポルスキー氏の研究では、「チェスプレーヤーのカルポフ氏が大量にカロリーを消費して体重が激減してしまった理由は、実は思考とはあまり関係がない」ということも突き止められています。サポルスキー氏によると、チェスを指している最中のカルポフ氏は呼吸が普段の3倍も速くなり、筋肉も収縮して血圧が上昇していたとのこと。こうした肉体的な緊張が消費カロリーを増やし、精神的な重圧による食事の量の減少や大会期間中の不規則な食習慣も相まって、カルポフ氏の体重が減少してしまったのだと、サポルスキー氏は推測しています。