今をさること14年前、人気絶頂のお笑い芸人が突然ブラウン管から姿を消した。お笑いコンビ、松本ハウスのハウス加賀谷だ。
彼は持病であった統合失調症に悩まされ、その悪化により99年に芸能活動を休止した。おりしも当時の人気番組『タモリのボキャブラ天国』でブレイク、脚光を浴びたさなかのことであった。

加賀谷の統合失調症との闘いは中学2年の授業中、「かがちん、臭いよ」と、教室の背後から友人の声が聞こえた気がした瞬間から始まった。
振り返ることで声の襲来を阻もうとしても、前を向くとまた声がする。
統合失調症の症状のひとつである「幻聴」であり、さらに「自己臭恐怖症」も併発していた。
加賀谷の精神は、小さな混乱や恐怖が積み重なってゆくことでこのように追い込まれ、自分の内側になだれ落ちるように崩れ壊れてゆく

原因は今のところ明らかではなく、脳内神経伝達物質の変化など個人のもつ要因のほか、ストレスなども関与するとされている

様々な症状が出現する中、最も辛かったことを尋ねると、「幻聴」だと語る。

「声がリアルな言葉として耳に入ってくるので、幻聴だなんて思わないし、今でもあれが幻聴だったとは信じられないほど。
自分が“臭い、臭い”と言われている。何よりも辛かったです」(加賀谷)