流浪の身であった武田信虎は信長の招きに応じ、岐阜城にやってきた。
「左京大夫殿! 儂の招きによくぞ、応じて頂いた! 礼を申し上げる!」
 大広間に響き渡る声で言うと、慇懃に頭を下げた。
「うむ。」
 尊大な姿勢を崩さず応じた。
 普段の信長であれば、無礼打ちをするであろうが、戦に強い信虎を客将として欲していた故に
 我慢した。
 国力、財力は日の本一であり、兵力も何万何十万と集められたが、それを指揮できる武将が不足していた。
 勇将の下に弱卒なしというが、飯田河原で十倍の敵を打ち破り、流浪の身であった際も九鬼水軍の客将として
 その指揮能力を見せつけた。それだけではない、七十を越しているのも関わらず、自ら太刀を抜き敵軍に突撃し
 幾十という首を挙げる様は恐るべき鬼神と言っても過言ではなかった。
 信長はそんな信虎を味方にしたかった。
「儂が味方になる以上、大船に乗った積りで安心されよ! 戦がしたくてウズウズしておる!」
 飢餓を彷徨う虎が獲物を欲しているかのように鋭い目で信長に訴えているかのようだ。

今日、石橋凌演じる信長、信虎を演じる平幹二郎の夢を見たので、思わず書いてみました。