>>158
芥川賞の候補にならなかったのはたしかに問題。
でも候補になっていたとして、受賞していたかは微妙。
語りが絶妙だったとはいえ、それ以外は大したことのない作品だった。
主人公をふくめどの登場人物にも存在感がなく、出来事の描き方も薄っぺらで軽かった。
その軽さが老齢と諦観からくるものだとしても、作中で相対化されていないので、読みやすさ以外の点ではうまく機能していない。
この軽さに、人生のおわりにふさわしい安らぎだけでなく、
不気味さや静かな迫力など複雑な調子が響くような描き方(つまり相対化)ができていないと、作品の文学的な強度は低くなる。
すばるの例年の受賞レベルを思えば選評で絶賛されるのも理解できるが、芥川賞確実という作品ではなかった。