夏の残像
​蒸し暑い放課後の体育館裏。
二人きりの、狭い更衣室。
​「あー、汗かいた……」
先に練習を終えた先輩が、タオルで首筋を拭った。
​私はまだ動けず、壁にもたれて息を整えていた。
​先輩は無造作に、汗で湿った練習着のTシャツを掴んだ。
そして、ためらいなくそれを脱ぎ捨てた。
​私は、息をのんだ。
​背中。
鍛えられた、しなやかな筋肉が浮き出た背中。
肩甲骨が、腕の動きに合わせて滑らかに動く。
​流れる汗の筋が、光を反射してきらめいていた。
​視線を逸らさなければと思うのに、目が離せない。
​先輩がスポーツブラのホックに手をかけた。
その細い指先。
​(ダメだ、見ちゃダメだ)
​そう思うほどに、喉が渇く。
心臓が耳のすぐそばで鳴っている。
​美しい、と思った。
でも、それだけじゃない。
もっと熱い何かが、お腹の底からこみ上げてくる。
​不意に、先輩が振り向いた。
汗で頬を上気させ、少し驚いたように目を見開いている。
​私の視線に、気づかれた。
​「……どうしたの? ぼーっとして」
​「あ、いえ……なんでも、ないです」
私は慌てて顔を伏せた。
​先輩の、濡れた肌の匂いが室内に満ちていた。
自分の顔が燃えるように熱い。