旦那が家が家にたどり着くと、中からは美味しそうな夕げの匂いが漂ってきた。
「お腹すいたな…」
旦那は特にお腹をすかせていた。
なぜなら今日は仕事が立て込み昼飯を食べそびれていたからだ。
いつもと変わらぬ仕事鞄、唯一違うのは食べそびれた愛妻弁当が朝出掛けた頃と変わらない重さのまま、鞄の奥底に仕舞われている。
「今日は唐揚げを入れておいたわ。
昨晩つけだれに浸けおきしていたのを忘れていたの。
今朝揚げたばかりだから、いつもより美味しいはずよ、お弁当といってもね。」
今朝の妻の嬉しそうな顔を思い浮かべると、そのまま弁当を返すのは忍びない、と旦那は思った。
妻は料理上手で、結婚の決め手に至ったのは他ならない料理の腕だ。
その料理上手の妻が渡してくれた弁当に手を浸けずに返すのは結婚以来今日が始めての事だった。
罰が悪そうな顔でドアノブに手をかける、少し扉を開けると美味しそうな夕げの匂いの正体はカレーだった事がわかった。
中でも妻の作るカレーは抜群に美味しい。
せめて唐揚げだけでもカレーと一緒に食べよう、旦那は思った。
ノブを回し威勢よく玄関へと足を進める。
「ただいま!」
弁当を残した罪悪感からか、いつもより声が出ていた。
何て言って弁当を渡そうか、そう考えていた旦那は思わず息を飲み、鞄を落とす。
そこには、全裸の妻が朝からすっかり変わり果てた姿で横たわっていた…